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地域医療の充足に関する調査

令和2年度 地域医療充足度調査

NPO法人艮陵協議会 理事・事務局長
東北大学災害医療国際協力学 教授
江川 新一

令和2年(2020年)6月に行った地域医療充足度調査結果を報告します。この調査は艮陵協議会の事業の一つとしての研修医および専門修練医の動向調査とともに行ったものです。アンケートを送付した120病院のうち69病院(57.5%)から回答がありました。

1.病床数の合計(未回答病院のHPからの集計を含む)矢印は前年度からの動向

① 一般病床 33497床↓(地域包括ケア病棟を含む)
② 療養病床 1634床↑
③ 結核病床 124床→
④ 感染症病床 96床↑
⑤ 精神病床 1604床↑
⑥ 合計 36955床↓

2.指定等の状況(HPからの情報含む)

(ア)臨床研修指定病院(単独・管理型) 55病院→
(イ) 臨床研修指定病院(協力型) 63病院↓
(ウ) 救急告示病院 60病院↓

3. Q1. 貴院の初期研修指導医の充足度を教えて下さい。(有効回答のみ)

①卒後7年目以降の全医師数 3,492(昨年度は3,185)
②うち初期臨床研修指導医資格を有する医師数 2,335 (①の66.8%)(昨年度は65.0%)
③卒後3-6年目の医師数 980(昨年度は714)

図1 病院ごとの臨床研修指導医の比率

図2 医師数ごとの病院規模と指導医の比率

 

4.Q2.貴院の専門研修に関する指導医の充足度を教えて下さい。

  新専門医制度の科目 在籍医師数 学会などの指導医
資格保有数
在籍医師数に対する
学会指導医比率(%)
1 内科 1,408 659 46.8%
2 皮膚科 73 27 37.0%
3 外科 633 279 44.1%
4 産婦人科 209 76 36.4%
5 耳鼻咽喉科 112 42 37.5%
6 脳神経外科 119 60 50.4%
7 麻酔科 193 93 48.2%
8 小児科 234 87 37.2%
9 精神科 75 35 46.7%
10 整形外科 254 91 35.8%
11 眼科 86 24 27.9%
12 泌尿器科 131 67 51.1%
13 放射線科 135 65 48.1%
14 救急科 127 52 40.9%
15 リハビリテーション 52 24 46.2%
16 形成外科 59 24 40.7%
17 病理 46 36 78.3%
18 臨床検査 16 5 31.3%
19 総合診療科 77 37 48.1%

 

5. Q3. 指導医の充足のために取り組まれていることを教えて下さい。

a 初期臨床研修指導医講習会に派遣している 49
b 大学の医局との関連を大切にしている 48
c 関連する複数の診療科が揃うようにしている 17
d 給与・待遇を充実している 27
e 宣伝・広告を充実している 10
f 指導医の雑用を減らすための事務職員を充実している 31
g 学会参加・情報取得の環境を充実している 38
h 学会の指導医取得がしやすいように環境を整備している 27
i 医師の人材マッチングサイトを利用している 11

その他の取り組み:

  • JCEPの認定を継続して受け臨床研修医への指導の質の向上に努める。
    • 秋田県臨床研修協議会及び秋田県医師会の指導医講習会へ、当院指導医をタスクフォースとして派遣している。
    • JAMEPの基本的臨床能力評価試験の結果を基に、当院の研修プログラムの指導内容を確認し、指導医へフィードバックしている。
  • 学会旅費・参加費・学会年会費の各医師分の予算がある。
    • 専門研修指導医の更新用の加算予算がある。
    • 専門研修指導医新規取得のための予算がある。
  • 臨床研修指導医講習会を開催している(年1回程度)
  • 大学医局と連携し、お力添えを頂きたいが、新規で連携(派遣)して頂ける話が無いのが現状です。
  • 関連する複数の診療科について、以前は揃っていたが、関連医局からの医師派遣がなくなってしまい、現在は揃っていない。

 

6.考察

ご回答いただいた施設の集計で、36955床(一般病床33497床)という規模で、北海道から東北、関東にいたる加盟病院における医師不足の現況解析が可能となりました。昨年度と比較すると、一般病床が減少し、療養病床、精神病床、感染病床が増加しています。医療体制も高齢化社会、病院の役割分担などに応じて変化していることがうかがわれます。

今年度も、指導医の充足に焦点をあてて調査を行いました。初期臨床研修の指導医は、卒後7年目以降の研修医を指導する立場にある医師が、厚生労働省が認定する臨床指導医講習会を受講しなければなることができません。ご回答いただいた施設の卒後7年目以降の医師3492名(昨年度より307名増加)のうち、初期臨床指導医資格を持っているのは 2,335名 (66.8%)(昨年度は65.0%)でした。指導医の数、比率ともに増加しているようです。図1は医師数と指導医の比率を表しています。人数の多い組織では60%以上の指導医比率ですが、大学病院のように人事異動が頻繁だと、適切な指導医数を維持することの難しさもあると思われます。また、医師数の少ない施設では指導医比率のばらつきが多く、指導医資格を取得することの必要性によっても取得率が変わると想像されます。

厚生労働省の臨床研修指導医講習会の認定要件は、必要な項目を満たすワークショップ形式で休憩時間を除いて最低16時間(1泊2日あるいは2泊3日が必要)の研修時間が必要な指導医講習会で、定員も最大48名と決められています。取得を希望される方は、ぜひ艮陵協議会の指導医講習会を受講してください。

2年間の初期臨床研修が終了すると、ほとんどの研修医はなんらかの専門医プログラムに進むことが予想されます(令和2年度 研修医・専門医の動向調査を参照ください)。そこでは、専門研修を指導することができる学会認定の指導医が必要になります。専門医制度の19領域における学会認定の指導医は領域によって大きく異なり、27.9%から78.3%とばらついています。専門修練医は、すぐれた指導医のもとでの専門医研修を望んでおり、加盟病院におかれましても、すぐれた指導医の確保は大きな課題です。高齢化とともに、人口減少が進む地域においては、病院の収益も悪化しかねず、医師の確保そのものが困難になっているかもしれません。また、指導医クラスの医師を確保できなければ、地域を守るセーフティーネットとしての病院機能が低下し、病院の存続も危うくなる可能性があります。人口が減少しても、高齢化による地域医療のニーズはますます多様化しています。多様な診療科をそろえる、あるいは、総合診療をはじめとする多様な医療ニーズに応えることのできる医師の確保は大きな課題です。

指導医充足のために加盟病院がされている努力は多岐にわたります。大学の医局は地域医療への人材供給元となっています。指導医資格を取得するよう、支援がおこなわれています。医師の雑用を減らし、学会・研究会などにも参加しやすくするための環境整備や配慮もなされています。その一方で、大学からの支援がなくなったという声も聞かれます。たとえば消化器外科と消化器内科、麻酔科などの関連する複数の診療科が揃うような工夫はもっとできるかもしれません。人材を供給することができる大学と、地域のニーズを調整する仕組みが重要だと思われます。給与や人材マッチングサイトなどの利用率は低く、信頼できる医師の確保の困難性を伺わせます。

艮陵協議会の指導医講習会では、『いい研修病院とはなにか』、『一人前の医師とは』『楽しく教育するにはどうしたらよいか』など関連しそうなテーマでグループワーク、ワールドカフェ、バズセッションなど多角的な議論を巻き起こす工夫をしています。医療従事者ができること、各病院でできること、行政を変えていく必要があることなどさまざまなレベルでの改善点があるものと思われます。

今後もこのような調査を継続的に行うとともに、ご意見を少しでも反映させられるようにするにはどのようにしたらよいかを皆さまとともに考えてまいりたいと存じます。

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